サルタリィ・ベンは、競走馬飼料・競走馬サプリメントを通して丈夫な馬づくりを応援しています。
競走馬飼料として多用されているゼラチン、コラーゲンとアミノ酸の補給を目的とした純品100%タイプゼラチンは、 予防医学の素材としても重要な物質です。
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(第1話)消化器系とはどんなところ?

(第2話)馬の口腔の仕組みと働きを知ろう!!

(第3話)咽頭と食道そして胃の仕組み知って健康な馬にしよう!!

(第4話)腸の仕組みを知り丈夫な馬をつくろう!!

(第5話)便の形成が主な役割の大腸について知ろう!!

(第6話)ボロと命のカギを担っている腸について知り長命な馬をつくろう!!

(第7話)肝臓と膵臓の仕組みを知り消化器官の丈夫な健康な馬づくりに役立てよう!!

(第8話)剖検例から消化器疾患の予防を考える

(第8話)剖検例から消化器疾患の予防を考える

馬の消化器疾患は日常の飼養管理の充実によって相当部分を防ぐことが可能である。
以下に経験した馬の胃腸疾患での剖検実像を主体に紹介する。

牝馬の馬体左側からの腹腔臓器位置並びに名称模式図:馬は左側大腸による疝痛が多い。


1)胃潰瘍病変:
各種胃潰瘍病変(↑):
 左側上段:胃大彎襞状縁の胃潰瘍からの破裂。腺胃部の陳急性出血性潰瘍の多発。
  腹膜炎、2歳、発汗、腹囲膨満、震顫の後に1日の経過で斃死。疝痛歴有り(恐らく胃潰瘍からの胃破裂)。
 左側下段:腺胃部の破裂、襞状縁の胃潰瘍:病理所見として腹膜炎、回盲孔部に回腸の嵌頓・重積、小腸気腸。
  葉状条虫、円虫、フィラリア寄生、前腸間膜動脈瘤、陳旧性胃潰瘍。
  サラ、4歳7ヵ月齢、激しい急激な疝痛、経過1日で斃死、腹部膨満、肛門哆開(しかい)、苦悶の状激しく全身擦過傷。
  常習疝痛馬(恐らく以前からの胃潰瘍病変によるものであろう)。
 右側(上段):襞状縁(ひだじょうえん)での潰瘍:腹膜炎、出血性臍帯炎と尿道炎。
  症例:5日齢、初乳を飲めず、生後3日目から起立不能。胃潰瘍は胃粘膜の異なる食道粘膜(白色部分)との境目の
  腺胃部に好発する。
 右側(下段):腺胃部と無腺部の糜爛、潰瘍:2ヵ月齢、サラ、♂、関節炎→大葉性肺炎で斃死。
  関節炎などのストレスによる胃潰瘍(↑)である。

2)胃へ馬虻幼虫寄生:
左側:馬虻幼虫の胃内寄生:壁状縁に多数の集団寄生(↑)。下段には前胃部(食道部)に寄生した幼虫の胃筋層にまで達する
 頭部の侵入・食い込みをしている⇔胃潰瘍好発部位との関係に注目して、予防の一つにボロに混じって出てきた馬虻幼虫の
 駆除が必要である。
右側:シャロレー牧場の乗馬指導員とドサンコ⇔食欲もあり健康だが馬虻には気をつけよう‼。
 虻は馬の被毛に虫卵を産み付けるので、馬はカユくて口でカキムシリ虫卵を飲み込んでしまう。

3)小腸の腸重積と捻転:
左側(小腸の腸重積):
 腸の運動を司る自律神経叢の局所的な異常運動のために小腸が腸管の中に約70cm入り込み、【黒く出血している粘膜部分】。
 1日の経過で斃死した疝痛例。2歳6ヵ月齢、サラ、雄、競走馬。
 原因として、温かい飲水の後の急激な寒冷給水などによる腸の局所的な機能亢進が言われている。
 本例は、重積部分に古い原因不明の病変があったことから、この部の病変が腸の局所的な異常運動を起こし疝痛の
 引き金になった可能性がある。
右側(小腸の横軸捻転):
 盲腸と後腸間膜に形成された紐状の陳急性癒着結合組織(⇒部は生前の腹膜炎などにより二次的に形成されたと推察)の
 空隙に小腸が嵌入して360度の捻転した症例:【赤黒く出血している小腸とそれに連続した血管の見える薄い膜が腸間膜で、
 この部の根部で捻れて発症。なお、右側の腸は大腸(盲腸、大結腸、小結腸)で正常】。症例は約1日の疝痛経過で斃死。
 11歳、ポニー去勢馬。
 小腸捻転症は、馬に多発する疝痛の一つで、腸間膜を軸にして小腸が回転して元に戻らなくなった状態である。
 原因として、馬に多い腸間膜の根部に形成される寄生虫性動脈瘤による腸機能異常を招いた場合、
 或は馬の腸神経の末端は他の動物よりも鋭敏であることから通常と異なった飼料を食べた場合
 などに腸の異常な運動が起こり易い。例えば、飼葉の量や種類の変更、運動前後の冷水や飼葉の過量、
 不潔な醗酵した飼葉、春先の青草、過激な寝返り、厩舎移動など。日常の飼養管理が大切。

4)空腸重積と脂肪腫による捻転:
左側(空腸重積):サラ、雄、30日齢、関節炎から疝痛を発症して斃死。
 空腸中央部で約3mに及ぶ腸重積(暗黒色部分)のため、重積部から十二指腸までの顕著な気腸(膨大部分)。
 盲腸、結腸は内容物の通過不可により空虚。腹水は増量溷濁(急性腹膜炎の発症)。
右側(空腸横軸捻転症例):脂肪腫の紐により空腸の絞扼と横軸捻転:
 小児頭大の有柄脂肪腫(↑)により絞扼:空腸の2回転に及ぶ横軸捻転。出血性壊死性腸炎、腹膜炎、血液凝固不良。
 その他、腸間膜に脂肪腫散在。症例は種牡馬、23歳、蠕動運動亢進剤投与に反応弱く、疝痛症状著明にして約1日半で斃死。
 肥満は避け運動と栄養に注意を。

5)盲腸便秘症とX-大腸炎例:
左側(盲腸便秘):
 盲腸の内容物は全体的に粘っこい液とともに粘膜へ膠着(こうちゃく;こびりつき)している。特に盲腸底部には乾燥性の
 内容物を多量に容れている。この部の盲腸粘膜は臍帯炎(さいたいえん)から感染した細菌によって腸炎を起こし、
 しかもこの腸炎部に内容物が膠着し便秘になった症例。ストレスや臍帯感染、更には抗生物質の過剰投与は避けましょう。
 症例はサラ、雌、16日齢、臨床的には生後1日目から下痢(白痢)、2日目から疝痛(血便をしている)症状を示して斃死。
右側(出血性大腸炎・]大腸炎):
 盲腸の内容物はチョコレート色の血様液状物を多量に入れている。
 症例は3ヵ月齢、悪臭のあるチョコレート様の出血性の顕著な下痢。ショック死。

6)寄生虫性動脈血栓症と結腸内に寄生虫の寄生例:
左側(普通円虫による腹大動脈から後肢の動脈に至る血栓形成):
 ハンター種、13歳、去勢馬、乗馬、インフルエンザ感染で安楽死処置。
 寄生虫性動脈瘤であるが、このような大きな動脈瘤は疝痛の原因になっていることが多い。
右側(結腸に寄生した普通円虫症例):
 寄生虫は粘膜から吸血したために赤黒く太くなっている。
 寄生した部位の粘膜は吸血のために点状の出血した状態を残している。成虫はボロに混じり排泄されるので注意。
 駆虫が大切です。
 症例はサラ、2歳11ヵ月齢、雄、左第三中手骨骨折で安楽死処置された競走馬。鼻の差勝負の世界ではこの濃厚な
 寄生虫感染で栄養が奪われてしまい勝てっこない。

7)馬の主な寄生虫と寄生部位:寄生虫の住処は決まっている
*寄生虫の寄生部位が決まっていることを知ることによって胃腸管理は容易になる。

8)馬の消化器疾患発症部位と各種小腸変位経過の模式図
左側(消化器疾患の主な発症部位):注)字体の大きさは発症頻度の多少を示す。
右側(腸間膜を巻き込む小腸変位の模式図):
 左上段:小腸捻転の進展模式図。 左下段:小腸捻転及び腸絞窄(ちょうこうさく)。
 右上段:有柄脂肪腫による小腸閉塞の進展模式図。 右下段:小腸重積の経過模式図。

9)疝痛・腹痛の主な症状=疝痛発見の参考に=
 @ 多くは急に発症
 A 挙動不穏(きょどうふおん⇔オドオド、キョロキョロ、落ち着きが無い)。
 B 病勢の重い時;頻りに起伏、身体を伸長、後肢を開帳して排尿肢勢
 C 激烈の時;突然の転倒あるいは仰臥して四肢を屈して腹上に、犬座姿勢、ゲップ、嘔吐、
   震顫
(しんせん;ふるえ)。
 D 可視粘膜(眼結膜、口唇、肛門の粘膜)常色→充血→不潔暗赤色→淡黄色
 E 口腔粘膜;充血乾燥→蒼白→舌苔
 F 脈拍;増数→脈拍細い
 G 心機亢進;呼吸増数
 H 体温;重症は40℃以上、耳根部冷感、発汗、痛みの持続時は排尿なし
 I 直腸検査;糞塊の停滞あるいは全く無し、直腸粘膜は熱を帯び腫脹(腸が傷つきやすくなっているので
   注意して検査)。腸重積、ヘルニヤ、嵌頓
(かんとん)、結石などを発見することあり
 J 疝痛から腸炎に転じた場合;痛みで苦悶し横臥、結膜暗赤色、脈は細弱、体温上昇
   冷たい粘性の汗、口内厥冷し、急に虚脱(多くは胃腸破裂)

10)疝痛の主な素因と原因=疝痛予防の手助けに=
 @ 素因;
   *胃が小さい⇔胃の噴門部の括約筋が発達←嘔吐が困難なために胃破裂。
   *腸間膜が長くて固着されていない⇔腸がねじれやすいので腸捻転・変位。
   *結腸で最も細い骨盤曲部、盲腸で最も大きい盲腸底(盲腸嚢)に内容物の停滞⇔便秘。
   *腸神経の末梢が鋭敏⇔小腸重積(ちょうじゅうせき)、や腸捻転。
   *寄生虫性動脈瘤が多い→血行障害と腸機能異常⇔寄生虫疝痛、腸捻転や嵌頓。
 A 外気温の急変に弱い、感冒
 B 小さい胃に過食胃腸内の発酵腸内容の停滞飢餓
 C 飼料による傷害結石、結糞塊、土砂
 D 多くの寄生虫の寄生
 E 腸の狭窄部位
 F 腸の変位(軸転、纒絡、重積、嵌頓など)
 G 敏感な腸の組織変化(腸カタル、炎症、潰瘍など)
左側:シャロレー牧場のトレッキング用馬の休息
右側:シャロレー牧場のトレッキング用ドサンコ達の食事


11)疝痛の予後判断=疝痛の良し悪し=
 @ 一般的にみられる疝痛の場合前掻き、回転、横臥、腹部を蹴る、横腹を見る、発汗、
   繰り返しの排尿の試み
⇔早期に気付けば予後は良い方向に。
 A 強く持続的な疼痛の場合最も重度の病状⇔血行障害(腸壊死)時にみる。
 B 虚血性の腸管の場合⇔腸組織は無酸素状態になるために強い痛みを示し予後は良くない。
 C 一度腸管が重度の機能障害と壊死に陥った場合⇔馬は疼痛がおさまり沈うつとなり
   エンドトキシンショックの徴候を示し予後は良くない。
 D 腸管の通過障害の場合⇔ガスや内容物の貯留⇔疼痛でショック状態、拡張が急速であれば激しい疼痛、
   小腸の拡張は大腸に比べ拡張に限界があるので更に激しい疼痛症状
⇔発症部位(小腸と大腸)と
   予後判断の鑑別に。

12)消化器系の日常の馬体管理・検査・注意点:
 @ 日常と変わりなく正常に採食しているか?⇔日常の個体ごとの行動を知っておくこと。
 A 食べこぼしはないか?⇔歯や口内疾患を疑うこと。
 B 過度の流涎を認めるか?⇔口内炎や中毒を疑うこと。
 C 体重の減少はないか?⇔各種消化器疾患を疑うこと。
 D 腹痛の症状はあるか?⇔真正疝痛か偽疝痛かを鑑別すること。
 E 異常を示してからの経過時間は?⇔早期発見を最優先にすること。
 F 他の馬に同様な異常がないか?⇔感染病、伝染病、中毒などを考えること。
 G ワクチンの接種や駆虫状況、歯科の予防歴はどうか?⇔予防暦を記録しておくこと。
 H 飼養場所は屋外か屋内か?⇔飼養環境を把握しておくこと。
 I 飼料・飼葉は加工品か牧草か、添加物はどのようなものを与えているか?⇔日常と異なった飼い方を
   行ったかどうかを知っておくこと。

 J 土砂の多い環境での飼育か?⇔大腸に砂が貯留する疝痛があるので、注意。
 K 健康時の腹部の腸音を知っておくこと⇒左側と右側の音を徹底して聞く。
   通常は脾腹・ヒバラから始めて、腹部中央そして下腹側に向かって聞くこと。

  *聞き方は、厚紙の筒を適度な大きさにつくり、馬の腹部と人間の耳に当てる。
  *通常は
「ゴロゴロ」、「ブクブク」、「パシャン」などが聞こえる。
  *音の強弱、高さ、長さに注意して聞くこと。
大腸は小腸に比べて低く深い音に聞こえる。
  右側ヒバラ部では、回盲結腸音で排水管に流れ込む水のようなかん高い音(正常では1〜3回/1分間)。
  *
腹部下方では小腸音が聞こえる。胃腸管内の空気の移動音で低い液体の音⇔絶食や空腹時には音は
   聞きづらい。小腸音の回数や強度の減少は予後不良が多い。
  *
腸音の持続的な廃絶は予後が悪い。逆に胃腸音の高い強度と大量のガス貯留は痙攣疝の徴候である
   ⇔この時に腹部を叩いてみると更に共鳴音を聞くことになる。






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