サルタリィ・ベンは、競走馬飼料・競走馬サプリメントを通して丈夫な馬づくりを応援しています。
競走馬飼料として多用されているゼラチン、コラーゲンとアミノ酸の補給を目的とした純品100%タイプゼラチンは、 予防医学の素材としても重要な物質です。
運動器(蹄・骨・関節など)の健康に!若馬の成長に!胃腸の健康・疲労回復に!
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(第1話)消化器系とはどんなところ?

(第2話)馬の口腔の仕組みと働きを知ろう!!

(第3話)咽頭と食道そして胃の仕組み知って健康な馬にしよう!!

(第4話)腸の仕組みを知り丈夫な馬をつくろう!!

(第5話)便の形成が主な役割の大腸について知ろう!!

(第6話)ボロと命のカギを担っている腸について知り長命な馬をつくろう!!

(第7話)肝臓と膵臓の仕組みを知り消化器官の丈夫な健康な馬づくりに役立てよう!!

(第8話)剖検例から消化器疾患の予防を考える

(第4話)腸の仕組みを知り丈夫な馬をつくろう!!【なぜなら腸は短命であるから】

1.馬体の栄養吸収部位である小腸の仕組みを知ろう
*腸は、小腸と大腸からなり胃からの管で肛門まで通じているが、
 このコーナーでは小腸(大腸との違い)を主に取り上げてみたい。

早春の和やかな親子の放牧風景

馬(雄)の右側の腹部と骨盤内の臓器の位置模式図:
 腸の多くは盲腸と結腸の大腸主体で見えるが、骨盤近くに小腸が少々位置している程度である。
 したがって、右腹側では大腸音を聞いて健康状態や馬に多発する大腸の疝痛程度を聞き分けることが可能になるでしょう。

1)小腸から大腸までの主な役割は栄養吸収と排泄にある
@ 腸は、胃である程度消化した食糜(しょくび)・食塊(しょっかい)に消化液を更に追加して
  栄養分を吸収し、残りカスを排泄する
役割を担っている。
A 腸の消化作用と栄養分の吸収を限られた腸管容積のなかで有効に働かせるために多くの
  腸絨毛(ちょうじゅうもう)をもち吸収面積の拡大をしている。
  腸の面積を大きくするために
、ヒダ(腸絨毛ちょうじゅうもう)が発達(栄養分を多く吸収)。
  因みに、ヒトの腸絨毛の全面積は42.3m2(約25畳分)。
B 腸粘膜は典型的な吸収器官であるが、馬の十二指腸で1m、口径7p、腸絨毛の長さ0.5〜1o、
  幅0.2o、1o2 中に15〜50個の絨毛、十二指腸全体の絨毛の面積41,452p2となる。
  十二指腸がのっぺりした円筒の場合は2,199p2となり、腸絨毛によって19倍の吸収面積をもつことになる。
C 馬の小腸や大腸は腸間膜という薄い膜で脊椎に吊り下げられている
  この腸間膜には血管、リンパ管、神経が分布して、腸への酸素供給や、吸収された栄養の運搬を行っている。
  特に栄養を運ぶ血管は、門脈として肝臓に栄養を集め貯蔵している
D 草食性の動物は、肉食性の動物よりも食性の関係で腸が長く多量の容量で重い⇔馬の脊椎(この中を脊髄が
  走行し腸機能をコントロールしている)が重みで脊椎が弛んでいないことが大切⇔セッタレ馬は
  疝痛になり易い。
E ヒトに飼育されて家畜化された動物は腸が長くなる
  例えば、家イヌや家ネコは近縁の野獣よりも雑食に近くなるので腸が長い。
F 鳥類は空中飛行のため→体重を軽くする→腸が短い→特に宿糞(しゅくふん)を少なくするために大腸が短い
  尿を溜めないために膀胱(ぼうこう)を持たない。鳥類の白い排泄物は実は尿である
G 草食性の動物は→盲腸がよく発達。肉食性は小さいか全く無い。
  *盲腸が大きい動物 ;馬、ウサギ、ヤマアラシ等。
  *盲腸が全く無い動物;クマ、テン、クジラ、イルカ、イッカク等。
H 腸の長さ(馬とウシの腸の長さ)
小腸大腸平均計体長比率
19〜30m6〜9.3m30m1:10
40〜496.4〜11m60m1:20

I 腸の容積(馬はウシよりも腸が短いが、大腸がとてつもなく太い)
全長盲腸結腸
221ℓ33ℓ118ℓ
101ℓ9ℓ28ℓ

J 腸と胃の消化時間と容量比
  *馬の消化時間は、大腸で54〜72時間(盲腸で18〜24時間)も滞在して充分に消化する。
   食糜(しょくび)中の粗繊維から吸収可能な低級脂肪酸(馬はエネルギーとして使う)と、炭酸、メタン
   などのガスに分解される。
  *馬とウシの胃腸の容積比:馬は胃1:腸20、ウシは胃1:腸0.5。
   馬は繊維類の分解作用を盲腸や結腸の中で微生物・バクテリアや消化液の助けをかりて
   行っている⇒ウシでは胃が主体である。
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牧柵内で青草を啄ばみながらのんびりした放牧風景

2)腸(小腸と大腸)の運動は神経による
@ 腸管内の食糜がよく消化吸収されるためには→腸壁を伸縮し、
  3種類の運動分節・ぶんせつ、蠕動・ぜんどう、振子・ふりこ】を起こし→消化液を混じり合せる
  必要
がある→そのために腸にある動きの異なる3種類の筋層・筋肉・平滑筋を動かし
  多数の腸絨毛に食糜を接触させ→吸収効果をあげている
A 腸は自律神経支配(交感神経と副交感神経の二重支配)を受けている
  支配している大元は大脳の視床下部と言う部位で、自律性を持ち緊張や薬物に敏感な神経である
  交感神経は腸の運動を抑制的に、副交感神経は腸運動を促進的に働き、お互いに協調しながら
  腸の働きをコントロールしている

B 更に、腸の筋層を支配しているアウエルバッハ神経叢(そう)と絨毛などの粘膜を支配している
  マイスネル神経叢があり、お互いに腸機能を細部にわたってコントロールしている⇔一生涯馬体の健康を
  維持するためには無くてはならない腸であることから、精密な神経支配が行われているのです

C この腸運動・神経に機能異常・障害が起こった場合は馬では疝痛・腸ねん転などを発症することになります
  ⇔日常の飼料とストレスに注意すること。

牝馬の左側からみた腹腔内の臓器の位置関係模式図:
 小腸は右側からの臓器位置と異なり、小腸の占める部位が比較的多い。
 このことは、小腸に病気(腸捻転などの疝痛)があった場合は、左腹側で腸音を聞いて健康状態か病的かを把握するのに
 都合の良い部位になる。

3)小腸と大腸の役割(栄養吸収)の主な違いはカルシウムとリン吸収にある
@ 小腸(十二指腸、空腸、回腸)の容積は全消化管の約30%で、消化吸収が活発な部位で、太さは一定、
  成馬で20m、容積60ℓで、でんぷん質、たんぱく質、脂肪の大半を分解・吸収している。
A 馬では、カルシウムとリンの吸収部位が異なるカルシウムが空腸と回腸の小腸で、リンは食物・食糜が
  大腸に入ってから吸収される。
  *リンが多いとカルシウムの吸収が阻害される⇔馬のリンとカルシウムの吸収場所が異なっているので、
  過剰なリン飼料は小腸でのカルシウム吸収を大きく阻害し⇒リン酸過剰症となり、
  骨の造成に影響し骨を弱くしてしまう。
  リンの過剰は小腸通過中のカルシウムをリン酸カルシウムにしてしまうので、
  小腸でのカルシウムの吸収を阻害する
⇔日頃から飼料の分析を行っておくことが肝腎である。
  *馬には胆嚢が無いが、脂肪消化には肝臓から持続的に胆汁とともに膵臓から膵液が十二指腸に流れ込み、
  効率的に脂肪を吸収される仕組みになっている。

4)小腸の仕組み
@ 小腸は、胃から十二指腸⇒空腸⇒回腸と続き、消化と吸収の90%以上を行っている重要な部位である。
  全長約22〜25mもある。
A その長さは、空腸が大半であるが、回腸にはパイエル小節【パイエル板・孤立リンパ小節ともいう;
  食糜と共に浸入した有害物・毒物を処理する部位で、細菌性の腸炎などでは腫大する】が
  肉眼(馬で100〜200個)でも見られるが空腸には無い。

小腸と大腸の粘膜の特徴とパイエル氏板:
 小腸の粘膜は多くのヒダと絨毛があり、栄養の消化と吸収に役立っている。
 因みに大腸は、主に水分を吸収し、糞便をつくり、排泄する役目なために腸絨毛が無く単純な粘膜構造になっている。
 大・小腸ともに腸内に入った毒物や細菌などを素早くキャッチして対応するためのパイエル氏板(孤立リンパ小節)が
 粘膜上皮より盛り上がって存在している。

腸絨毛組織の仕組み図⇔
 最左側図(縦断像)の腸絨毛は粘膜面上に密生している小突起で十二指腸で長い
 中間図:腸腺・粘液を分泌する杯細胞(黄色)がある。
 右側図:絨毛の粘膜上皮の拡大で、黄色の杯細胞は粘膜が消化液で傷められないように保護し、
 さらに消化酵素を活性化させている⇔食肉性の動物・家畜で多くみる。
 大腸でのこの細胞は糞塊が円滑に移動しやすいようにする潤滑油の役割(便秘防止)をしている

左側:腸絨毛内の血管とリンパ管と神経;小腸で栄養分を吸収・運搬するための血管とリンパ管で、
   粘膜に多く分布し栄養分の輸送路(吸収された脂肪はリンパ管より、その他の栄養分は毛細血管により
   肝臓等へ運ばれる)になっている。
右側:筋層(自分の意思で動かくことの出来ない平滑筋と自律神経の位置図)は、2層の内輪と外縦の筋層が
   それぞれ収縮して食糜を混合し、後方に輸送する。腸の運動を支配している神経叢(マイスナーとアウエルバッハ)は
   粘膜と筋層の働きを互いに支配している。これらの作用が機能しなくなると疝痛を発症する。

6)小腸での消化と吸収は肝臓と膵臓の助けによる
@ 十二指腸への膵液、胆汁の流入と、小腸粘膜からの大量の腸液によって、食べた糜粥(びじゅく)は小腸で
  ほぼ最終段階までに消化され、栄養の大部分が吸収される仕組みになっています。
A 粘膜の腸腺から分泌される腸液は、弱アルカリで、1日約2ℓ分泌され、三大栄養素の消化を受け持つ
  消化酵素を含み
、しかも膵液の消化作用を補って消化を完成させています。
B 腸液は、粘液と重炭酸ナトリウム(NaHCO3)を多く含み、酸性糜汁を中和する役目をもっています。
C 消化液の分泌や小腸の運動は、自律神経の支配を受けているので自動的に動いているが、糜粥が十二指腸や
  上部小腸の粘膜に触れると、
消化管ホルモン
(セクレチン、コレシストキニン、パンクレオチミンなど)が
  分泌され、これが消化液の分泌や腸運動を促す役目ももっています。
D ビタミンの吸収は小腸で行われている
  水溶性ビタミンは拡散によって速やかに吸収され、脂溶性ビタミン(A,D,E,Kなど)は脂肪の吸収と
  同時に吸収され、抗貧血ビタミンB12は回腸で吸収されています。

小腸における消化と吸収の仕組み模式図:
 胃から送られた食糜が十二指腸で肝臓と膵臓から分泌された消化液で混和され、腔腸や回腸で更に
 消化ホルモンや腸腺から分泌された腸液によって小腸管内消化が行われ⇒次いで小腸上皮細胞によって
 最終的な膜消化が起こり、腸粘膜を縦横無人に走っている血管やリンパ管に吸収されて肝臓や全身に
 栄養分・エネルギーを行き渡らせる仕組みになっています。



次回は、大腸の仕組みや腸管が生涯・命のキーを握っていることの根拠などを紹介したい。



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